サンタクルス病院の息子は生後11日で大手術を受け、この時期ちょうど集中治療室にいた。ICU室内はさすがにストライキとは無縁で、赤ん坊患者のそばに誰もいないなどという状況は免れたが、看護婦さんは全員「私はストライキ中です」という、このストライキのために作られたシールを胸に貼って仕事していた。「あまり仕事しませんので、ごめんなさい」というメッセージなのかわからないが、こちら患者側にとって、彼らは緊急事態が発生した飛行機の中のステュワーデスのような不可欠な存在で、別にそこまで強調されなくて良かった。ストライキ突入の夜0時に何か打ち合わせのため集中治療室の一角に10数人輪になって集まっていたのが、実に印象的な風景だった。
息子の手術は朝9時に始まり午後の3時半までかかった。成功率が高い手術とはいえ、その万が一の可能性が脳裏から離れない。待機室に座っているだけでは文字通り地獄を見るようだったので、外に出て夫婦でトルコやアメリカでの思い出話をしたりしてリラックスするようにしていた。幸い天気がいい日で外にいると悪い予感はしなかった。
手術後対面した息子は血の気が全く引いていて、どんな映画にも見たことないような哀れな新生児の姿だった。将来への希望とか、待望の赤ちゃんといったすがすがしいイメージとは程遠い一人の小さな患者の姿であり、無数の体温計、血圧測定器、心拍計などといったカラフルなコードをつけられ、さらに7種類もの薬品のチューブにつながれていた。全身麻酔後の体は呼吸せず、機械が一定間隔で空気を吹き込んでいた。自分にはモニターに記されたデータが唯一の生命を確認できるインフォメーションだった。
看護師さんたちはその後24時間体制でモニターをチェックしながら、息子のさまざまなデータを2時間おきにメモしていた。術後の状態が良かったので、時間がたつにつれ薬品の量数は減り、呼吸器も徐々に外していったので息子も少しずつ動き始め、2日もすると目も開けるようになった。
息子はどうやら現代医学の誇る知識と経験豊富な執刀技術に命を救われたようだ。助産院での自然出産や自宅での水中出産など実践していたら今頃どうなっていたかを考えると恐ろしい。病院のしっかりしたシステムや有能なスタッフにはどのように感謝の気持ちを伝えられるかわからない。執刀医のドットール・ミゲル・アベカシッス氏はすでに我が家の英雄だ。
ストライキ中にも身を削ってお世話していただいた看護婦さんスタッフにも感謝と尊敬の意を表したい。
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