2009年12月6日日曜日

黒いオルフェ

テレビのザッピングをしていたら、「MEZZO」でブラジルの映画をやっていた。タイトルを見ると、「Orfeu negro(黒いオルフェ)1959年作」とある。カラーでそんなに古い映画には見えない。見ているうちにわかったが、例のギリシャ神話「オルフェオとエウリディース」のブラジルの貧困階級のカーニバル版だ。「アモール」役の子供もいるし、昔はやっていた仮面ライダーの悪役のような衣装を着た「Morte(死)」の役もいる。エウリディースは確かに死ぬが、一度も生き返らない。残念。

リオ・デ・ジャネイロの海岸線が背後に見え、カーニバル時期の音楽が鳴り渡る。単純なセリフに演技も未熟ながら、何かしっかり魅せられるものがあって、最後まで見た。感動した。

何が素晴らしいのだろう。音楽は本当に素晴らしい。永遠に鳴り響く打楽器のリズムは疲れを知らない。ミニマル・ミュージックのように同じに聞こえてところどころ変化がある。打ち合わせたようにテンポも変化する。歌もどういう決まりがあるのか、リズムに合わせて急に出てくるがきまぐれではなく、絶妙のタイミングで歌いだす。歌もいわゆるユニゾンの合唱だが、心と歌のバランスというか、ゆとりというか、なんて成熟されたものだろう。

ダンスも天才的だ。足さばきはサッカー選手のリフティングを見ているようだ。よく思われているようなハチャメチャな、ただ熱狂的という踊りではない。音楽もそうだが、どこかにシステムと規律があって、何といっても踊りには心がある。それは映画のための演技には見えない。

彼らの持つ才能を存分に見せられる。たぶんその強烈な才能に感動させられるのだろう。

話の内容そのものはナイーヴで、例の「オルフェオ」の内容に照らし合わせてなるほどな、と感じるくらいで、ブラジルそのものとはあまり関係がないのかもしれない。それにしても50年前のリオの様子、人々の表情が映し出されているいい映画だった。

次の日インターネットで検索してみたところ、当時いろいろ賞を取った有名な映画らしい。オルフェ役の「俳優」はフルミネンセのサッカー選手だったといういわくつきだ。

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