中華レストランといえば、言わずと知れたファーストフードの店として世界どこに行っても大体同じものを食べられる。安く、早く、そして野菜を多く食べられることもあって、学生時代はマクドナルドと並んで結構お世話になった。ひとむかし、鉄のカーテン時代のブダペスト旅行では、どこでまともな食事できるのか分からず結局中華で何度も済ませてしまったが、チャイナレストランはそういう非常時に使える便利さを兼ね持っており、マクドナルドも同じである。ただ、日本と違ってヨーロッパで本当の中華料理を食べたい、と思うとなかなかいいレストランにめぐりあわない。確かウィーン市内にも高級中華レストランはあったように思うが、高いお金を出してまで食べたいとも思わず、一度も行ったことはなかった。
さて、「マンダリン」では入ってすぐ予約受付専門のお嬢さまが店内に案内してくれる。そのポルトガル人の女性はまさにその容姿も笑顔も、そこらではまずお目にかけられないような応対ぶりで、レストランの内装や雰囲気と合わせて5つ星ホテルのサービスを思わせる。ポルトガル最大のカジノの中ということを意識させられる。
レストラン内はかなり大きく、そしてお客が多いのも最近の中華レストランではめったにない風景だ。大きな窓からはカジノ前の公園のカラフルな噴水ショーを鑑賞できる。照明は薄暗いが、あちこちに飾り物や食器や大きなつぼなどが上品に陳列されている。床は全面じゅうたんがひかれており、よって室内はかなり静かだ。
メニューには70ユーロもするスープや100ユーロの魚料理もあったりするが、13,4ユーロくらいの料理が多いので、たいていそれらから注文すると値段は普通の中華の2、3倍といったところになるか。
結局特別なものを注文することなく、マーボー豆腐や揚げめん、エビのピリ辛といったいつも食べるようなメニューになってしまったが、料理は繊細ですべてゆっくりおいしくいただけた。味も、色も香りも申し分ない。つくづく、今まで食べた中華で最高の部類だと感じた。杏仁豆腐は残念ながらなかった。
食事が終わって外に出ると、必然的に駐車場に向かうべくカジノ前の公園内を散策することになる。それがまた、さわやかな浜辺の風に当たりながら心地いいもので、まさにメニューにない「マンダリンの夜の後奏曲」のサービスである。
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