スタッフは姿の見えぬ料理人1人+カウンターのすし職人1人+ウエイター2人の全員日本人なので、そこそこ安心できそうな錯覚があるが、実は数年前、10ユーロの昼食メニューにうどんと称して、安物のきしめんが出てきたので敬遠してきた。
昨日はその悪い印象が、見事に証明された。もう2度と行くまい。
今回は、まだ日本食を食べたことがないという、年配の友人家族(ポルトガル人)4人が一緒だったので、僕がすべてメニューを決めることになった。とりあえず「お勧め品」の枝豆を、早速注文する。いまだに夏の暑い日だったし、冷ややっこも、と思ったが、7ユーロとある。そこで学生アルバイト風のウエイトレスさんに質問。「この値段ですが、大きさは?」「ほんのちょっとです」早口で、いかにも日本人とは接したくなさそうな、ヨーロッパではよく見かける日本人の女の子。「中華スーパーでは1ユーロもしないじゃないですか」と不遜ながら愚痴ると、「そういうのは生で食べられません。とうふはこちらで作っているものなので」。ということなので、3皿注文。なるほど、「自家製」というだけあって、かなり柔らかなおいしいお豆腐、その上には3cmの幅もありそうな立派な鰹節がたっぷりのっている。でもそれだけ。ネギも、おろし生姜もなし。
その他、前菜にはナスの味噌田楽も頼んで、これはサイズも大きく、なかなかおいしかった。ただ、スプーンと小さいフォークがしっかりと味噌だれに浸かってしまっていて、使う両手も必然的に油でギトギトになる。そこは手前のおしぼりで解決。
しかしこの時点で飲み物がまだ到着していない。せっかくの枝豆も、ビールが出てきたときにはもう食べ終わってしまっていた。
さてメインには、本当は70近い友人にぜひしゃぶしゃぶを食べてもらいたかったのだが、33ユーロとある。そこで例のアルバイトさんに聞く。「しゃぶしゃぶはどんな感じですか」「鍋物で、ご自分でテーブルで調理していただきます」。自分は大阪人なので、しゃぶしゃぶ料理の説明は受ける必要ない。「しゃぶしゃぶは分かるんですけど、どんな感じで出てくるのですか」「普通、初めての方にはお勧めしません」と続けられるので、「なぜですか」と返すと、「好きじゃないようです。でも食べたいんなら、注文してください」。と、ほら、ほら、とジェスチャー付きで言われてしまった。小声でかなりルーズな話しぶりは、この料亭並みの値段には相応しくない。
そこで隣のテーブルで娘さん家族と、お客さんに化けて食事されている、オーナーご夫妻に話しかけることにした。同じ質問をする。「先生、しゃぶしゃぶはどんな感じですか。」「えっ」「たれは何ですか。ごまだれですか。」「はい。ごまだれと、ポン酢と二つ付きます」。ドイツ人とのハーフの娘さんが、代わりに答えてくれる。「でもしゃぶしゃぶ用の肉は使っていないですよ」といわれるので、そこで一番気になっていたことを聞く。「肉は何グラムありますか」。これにはオーナーご夫婦、娘さん、ウエイトレスさん誰も答えられなかった。33ユーロで、100グラムだったらどうしよう?というのが頭にあったので、どうしても聞かないといけなかった。みな沈黙したので、失礼だったかなと思ったが、あとで嫁に聞いても、当然な質問だと言ってくれた。オーナーが「しゃぶしゃぶは食べてみたらわかる」と言ってくれたのだが、頼まないことにした。
結局定番のてんぷら、とんかつ、お寿司と無難な線で済ませることに。とんかつは、ウインナーシュニッツェル並みに薄く、大きさは手のひらサイズ。千切りキャベツと、一切のトマト、あと大さじ1のウスターソースがついてくる。味は、いたって普通で、ごはんもみそ汁もつかず、これで13ユーロ。
てんぷらは、エビ1尾、白身の魚、ナス、カボチャ、サツマイモ1切ずつ、インゲン豆1本。たれには大根おろしが付いてこず、当然ごはんもこない。これでまた13ユーロ。てんぷらの衣は分厚く、どちらかと言うと中華料理の衣のよう。これをてんぷらと名付けていいのだろうか。
ちらしずしは、サーモン4切れ、マグロ4切れ、超薄切り厚焼き卵2切れ、スズキ薄切り2切れ、タイ薄切り2切れ。とび子少々。これで16ユーロ。これで1人前では大人には全然さびしい。
あと「お勧め品」の一つ、タコ焼きも頼んだ。冷凍品かな、と思ったが、これも自家製らしい。6個付き、この店自慢の鰹節がしっかりかかっているが、青ノリはない。タコはほぼみじん切りになっていて、生地はホットケーキのよう。ネギもなし。あの山芋入りの、口にとろける大阪のたこ焼きとは別物だった。
友人たちはそれでもまあまあ満足していた。
思えば、ウイーンの日本料理店はどれもレベルが高かった。Krügerstr. の天満屋では、日本の料亭に劣らない繊細な料理が出る。値段はNOVO・BONSAI並み。ANAホテルの雲海は高かったが、品格があって接待によくつかわれた。ナッシュマルクトの「小次郎」では、今まで一番おいしいお寿司をいただいたと今も思っている。冗談みたいな超大盛りのチラシを出していただいたことには、本当に感謝している。
NOVO・BONSAIは量も少なく、材料も鰹節以外は乏しく、サービスも小さい店の割には遅く、悪い。味はそこそこだが、正直言って家で自分で作ったほうがおいしいと思った。日本食はブランドになっていて、おしゃれで通う人もいるから、それでも店に来てくれるひとがいるかもしれない。でも、日本人が来て、がっかりするようなサービスをする日本料理店はいただけないと思う。リスボンの別の日本料理+お寿司屋さん「とも」も同じように、信じられないサービスをする。この店も、NOVO・BONSAIも、申し訳ないがもう2度と行きたくない。
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