2010年8月30日月曜日

中華ショップでの買い物

点心料理はリスボンにはないのかなとふと思い検索してみたら、市内に一軒「香港大パレス」という名のレストランが出しているそうで一度行ってみたいと思っている。

ウィーンでは「点心」が当然一昔前のことだが、かなりはやっていて何度かおいしくいただいた。冷凍物でない、本物を出す店が何軒かあって、そういうところにわざわざ通った。点心の技術は難しいらしく、中国から専門の人を呼ぶらしい。腕のいい人はライバル店に引き抜かれ、新たな人材が次々やってくる。はやった店は第2店を別なところに出す。そういう豆知識はウィーンに何年もいる「人生の先輩」からありがたく頂戴した。

冷凍の点心料理はリスボン市内の中華ショップで安くで手に入る。種類はいろいろあるが、ベトナム産の30個ほど入っていて5ユーロというのを買ってみた。ややエビか何かのにおいが変で、本当はもっとおいしいはずだ、と思いながら食べるもの。

中華ショップといえばリスボンにいろいろなところにありそうだが、いつも行くところはマルティン・モニシュ区というリスボンのほぼ中心にある、中規模のスーパーのようなところだ。

近くにはアフリカ諸国・インド・中国籍の店が無序列に立ち並んでおり、通りには座ったり、立ち話したり、もしく別に何もしていないという人がたくさんいて、不思議な香辛料のにおいとともに区画全体に異様な雰囲気を醸し出している。自分のような異国人の男に怖いものはネオナチや極右警察官くらいだが、本国人がそこを普通に歩いて通過するにもなかなかの勇気がいる。近くの地下のパーキングエリアは取ってつけたようにすごく暗い。サングラスをかけたままで駐車場に入るとほとんど何も見えない。

アジア食品専門のお店の入り口には求人広告やら、の張り紙が漢字で書かれている。店内にはお米10キロとか、醤油20リットルとかのように大きい単位でたくさん売っているので中華料理店の人が買いに来る、本格的なところなのかもしれない。1ユーロで出来立てのおいしい肉まんをよく出しているので、帰り際に食べるときがある。誰がどのように作っているのか想像できないが、別に知らないくていいのかもしれない。そのほか、まず買うことのない豚や鳥の足の燻製のようなものも売っている。一度北京ダックがあったので試したことがある。だいぶん乾燥していて、味はかなり人工的でいまいちだった。

あと普通のスーパーではお目にかからない野菜が多くある。もやしは大きく、新鮮で一袋80セントで買える。大根は大きすぎるくらい立派だ。巨大ななつかしい20世紀ナシも売っていたことがある。豆腐はいろいろ種類があって、木綿豆腐だったかヨーロッパでは手に入りにくいやわらかいものも売っている。揚げ豆腐も売っていて、どのように使うのかさいころ型のものが多かった。いなりずしを作れるような大きなものがあったら買っていたが、なかった。

あとどういう名なのか、薄い紫色で、細長い茄子がある。それが20本くらい入っているのが2ユーロで買える。買うときは1週間はなす料理になる。巨大な緑色の瓜のようなものもあって、輪切りにして売っていた。どういう人が買うのだろうか。チャイナレストランではお目にかからない野菜だ。

「にがうり」もあった。もしかして、沖縄のゴーヤと呼ばれているのかもしれない。早速買って、インターネットでレシピを見ながら調理して食べてみたが、それは苦くて2,3口食べただけでやめてしまった。そういえば、苦いという味覚は存在するのにおいしいと感じたことはない。中国の人たちはどのようにして食べるのだろうか。

めん類もたくさん種類があり、どうやって調理するのかわからないもののほうが多いくらいだ。結局いつも買うのは「日本式北海道うどん」という、4袋入りで1,2ユーロのものだ。「Nittin」という中国のメーカーで、日清のパクリか。Made in Japanとまで書いてある。この賞味期限が2010年の終わりとあって、生めんが常温でこれだけ持つのはかなり不思議だが、それでもうどん食べたさに買ってしまう。
開封すると食べ物のにおいがしない。プラスティックのようなにおいがする。作り方はそのままスープに入れるとあるが、少し怖いので一度沸騰したお湯に通す。どういう小麦粉を使っているのかと疑うくらいうどんの味がしない。ただ、歯ごたえはまさしくうどんそのものである。

中国の人たちが健康上の理由から買わない中国産品があると聞いたことがあるが、こう品が並んでいるのどの製品が信用あるのか本当にわからない。疑いがあるのなら買わなければいいのだが、今まで食べて気分が悪くなったことはないので続けて買ってしまう。

レジのおばちゃんにはいつまでたっても顔を覚えてもらえない。支払いの際はお互い無言だが、こちらからもポルトガル語をつい口にしないようにしている。心のどこかでまた中国人と間違えてもらいたいと思っているのかもしれない。

2010年8月4日水曜日

小児心臓外科の診察

息子の術後診察がようやく2か月遅れであった。サンタクルス病院の院長さんになってますます多忙になったドットール・ルイ・アンジョス先生に久しぶりに顔を見てもらって親として感無量だった。

心臓の状態は上々で、血液の逆流もなし、大動脈の状態もよし、エコ心電図での16部分の診察ですべて最高点がでた。テスト点数でいえば100点である。手術後のいろいろ起こりうる問題点は今のところ全てクリアしているようである。心室中隔欠損はわずかなすきまで、後に自然に閉じる可能性が大きいという。

先生からこれから大きな心配なく、スポーツでもなんでも他の子と同じようにやっていい、とのうれしい言葉を頂けた。
あれだけ元気でいつもご機嫌の子供の様子を見ていると、何かよくないわけはないと思っていたが、実際お墨付きを頂いて夫婦ともどもかなり晴れた気分になった。術後の初診察というのは、息子のこれからの人生の裁判のようで、心のどこかに潜んでいた悩みの種だったのかもしれない。
これからの診察は一年おきだが、自らの足で歩くようになっても、大きくなって一人で診察に来るようになってもずっと今回のような模範的患者のままでいてほしい。

2010年7月15日木曜日

エストリル・マンダリン

「マンダリン」は楽器のことでもバルトークの曲名でもなく、実はエストリル市の巨大なカジノの建物内にある中華料理店の名前である。以前からマカオの本場料理を出すといううわさは聞いていて、カジノ内にあるということからあまりに恐れ多くこれまで近づいたことはなかった。最近になって値段は意外にそう高くはないと話に聞いたのでさっそく行ってきた。

中華レストランといえば、言わずと知れたファーストフードの店として世界どこに行っても大体同じものを食べられる。安く、早く、そして野菜を多く食べられることもあって、学生時代はマクドナルドと並んで結構お世話になった。ひとむかし、鉄のカーテン時代のブダペスト旅行では、どこでまともな食事できるのか分からず結局中華で何度も済ませてしまったが、チャイナレストランはそういう非常時に使える便利さを兼ね持っており、マクドナルドも同じである。ただ、日本と違ってヨーロッパで本当の中華料理を食べたい、と思うとなかなかいいレストランにめぐりあわない。確かウィーン市内にも高級中華レストランはあったように思うが、高いお金を出してまで食べたいとも思わず、一度も行ったことはなかった。

さて、「マンダリン」では入ってすぐ予約受付専門のお嬢さまが店内に案内してくれる。そのポルトガル人の女性はまさにその容姿も笑顔も、そこらではまずお目にかけられないような応対ぶりで、レストランの内装や雰囲気と合わせて5つ星ホテルのサービスを思わせる。ポルトガル最大のカジノの中ということを意識させられる。
レストラン内はかなり大きく、そしてお客が多いのも最近の中華レストランではめったにない風景だ。大きな窓からはカジノ前の公園のカラフルな噴水ショーを鑑賞できる。照明は薄暗いが、あちこちに飾り物や食器や大きなつぼなどが上品に陳列されている。床は全面じゅうたんがひかれており、よって室内はかなり静かだ。
メニューには70ユーロもするスープや100ユーロの魚料理もあったりするが、13,4ユーロくらいの料理が多いので、たいていそれらから注文すると値段は普通の中華の2、3倍といったところになるか。

結局特別なものを注文することなく、マーボー豆腐や揚げめん、エビのピリ辛といったいつも食べるようなメニューになってしまったが、料理は繊細ですべてゆっくりおいしくいただけた。味も、色も香りも申し分ない。つくづく、今まで食べた中華で最高の部類だと感じた。杏仁豆腐は残念ながらなかった。

食事が終わって外に出ると、必然的に駐車場に向かうべくカジノ前の公園内を散策することになる。それがまた、さわやかな浜辺の風に当たりながら心地いいもので、まさにメニューにない「マンダリンの夜の後奏曲」のサービスである。

2010年6月25日金曜日

ニンジャ作戦とオーストリアの文化の壁

日本の先日の試合は絵に描いたような見事な戦術勝ちで、思いもよらず立派に決勝トーナメントに進んだ。現状のままでは全く通用しない、という危機感からスタイルや起用する選手を変え、それが対戦相手をも惑わせ、功を得たようだ。今回は全部かなりの差で負けると思っていただけに、物事は実際にその時になってみないと何が起こるかわからない。

ただ後半、相手がセンターバックを1人減らしていた状況で、何度も絶対的なチャンスを作りながら点を終了間際まで取れなかったのはさびしいことだ。ぺナルティーエリア内で目の前が空いている状況で横パスがあったり、ゴールのシーンでもキーパーと至近距離での横パスとか、普通はあまり見られないかなり変なシーンもあった。

日本の新聞は相変わらず選手や監督、または元選手やいろいろな人たちのコメントを紹介することに終始しているが、イタリアのガゼッタはいつも記者の署名入りの文で、主観的な意見があって読んでいておもしろい。
でもきょうはオーストリア国営放送協会(ORF)発のひどい記事を見た。

オーストリアの新聞によく見る文化的壁を感じさせる文章で、その壁というのは限りなく厚く、高く、しかもはるか彼方に離れたところにある。一般的にオーストリアでは日本について、政治であれ、スポーツであれ、音楽であれ、いつもだいたい同じ文章で表現される。日本人というのは感情表現をせず、万もの群衆がナイーブな同意見を持ち、彼らが発する言葉は4,5単語程度でインテリジェンスは猿なみか、または話せる犬のようにに描かれる。読者にとっては記事の真偽などどうでもよく、たいていは外の文化の異質性を強調させた、ようするに大衆週刊誌のレベルの記事である。

まずオカダ監督の戦術は「ニンジャ作戦」と日本で名付けられているという。どういうものかといえば、「相手をいらいらさせ、すかさず一点を取り、相手の作戦をこわす、すなわち忍者戦法」とあり、あげくの果てには岡田氏の選手時代も同じようにプレーしていたという。オカダ監督は以前全く目立たない普通の一選手ではなかったか。
すしと同じで日本からすぐ連想させるもので、たやすい手段で一般読者に喜ばれようとしている。記事は読売新聞からの引用だというが、ヨーロッパ人ならともかく、日本人の記者がこういうでたらめを書くだろうか。次回の記事には、すし戦法がでてくるのか。

そのほか、真夜中にかかわらず41パーセントの視聴率があったとし、選手の生まれ故郷はにぎわったことも書いてあり、本田は「大阪の宝だ!」と叫ばれたという。本田選手の出身はどちらかというと名古屋か、石川県ではないだろうか。日本中がパニック的な歓喜に包まれているという描写で締められている。

これが天下の国営放送社の記事である。オーストリア随一のクウォリティー新聞とよばれる「プレッセ」にも、アンゲリカ・ケーラーという名の、アジア諸国のニュース記事担当で同じようにひどい書きかたをするのがいた。そのような文章を読んで何が面白いのか理解できない。

ただ、たまたまドイツTVで見た長谷部選手のインタビューでは、まず質問の意味を把握しておらず、しゃべってもそれこそ4,5単語しか出てこなかった。あれではどう思われても仕方がない。言葉ができないのは普通などと思っているのか、話せないのならインタビューなど受けるべきでない。

2010年6月9日水曜日

細気管支炎

夏の終わりに息子は保育園に預けられることになる。身がよじれる気分だが、ヨメもやはり仕事に復帰しないわけはいけないのでどうしようもない。当初の予定だった自宅近くの保育所より、ヨメの仕事先の近くのほうに決めることにした。施設は室内が明るく、清潔そうで、壁にはきれいな絵が描かれている。何よりスタッフの人材が良さそうな気がする。本当にこれでいいのだろうか。心は決して明るくない。

TGA患者の幼児にとって、命取りになりかねない感染性の病気は「細気管支炎」という。予防できるものなら、なんでもするつもりである。サンタクルス病院では退院後すぐ、予防接種を2度にわたって受けた。生後6か月までが最も危険というから、これから夏の季節でもあるしひとまず安心だが、ちょうど保育園に通い始める9月から生後1年になる1月までは危険な時期だ。

2010年6月6日日曜日

ワールドカップ

インターネット上でしか読めないが、新聞は選手のコメントをそのまま載せて記事にするというのが伝統らしい。どの新聞社も大体同じで、記事は選手や監督の発言に対する感想文のようだ。専門のスポーツ記者の積極的な意見や試合前分析などは個人ブログにしかないのかもしれない。批判的な意見は多くあるが、先発メンバーをどうするべきか、というまじめな議論もあったら読んで楽しいのだが。
公共の場ではいろいろスポンサーなり、宗教団体なりの政治的な背景もあるかもしれない。オカダ監督のベスト4発言もスポンサーのにおいがする。
現場の選手や監督にも見えない、観客の立場で初めて見える問題点はあると思う。相撲の分野だったらかなり上級の分析記事を見つけられるのだが。

せっかくの機会なので、いい思い出作りに「もしかして自分が監督」のつもりで、選手起用をここに書きたい。キーパー川島。テストの試合で2回も成功した人には、これから続けて試合に出る権利あり。前回の川口のような、恥ずかしいゴールはもらわない気がする。センターは中澤と阿部。中澤はもう5,6年前からピークを越している選手だが、代わりがいないので出ないわけにはいかない。阿部は同じくスピードも判断力も世界的レベルから遠いが、ここにも他に選択肢がない。トゥーリオは守備陣には欠かせないが、センターバックの2,3歩前の中央でプレーし、もっと攻撃にも自由にできる方がいいかもしれない。トゥーリオも数年前のほうが良かった。左右のサイドバックは長友と稲本。稲本は対人プレーの強さもあるが、この位置でもゲームメークをできる強みがある。長友は攻撃面でプラスだが、プレーが前かがみすぎてサイドバックとしてほんとうは危ないと思う。むかしの中田浩二のような、もっと地味な、枠役の選手がこの位置にいればいいのだが。中央は遠藤と長谷部。この2人はどう見てもチームの柱で誰が見てもまずはずせない。1,5列目に本田、2トップに森本と松井。松井は当然サイドアタッカーとして左右でかき回す。3人ボールキープできるタイプで何とか攻撃の形作れるでしょう。運が良ければ、どの相手でもこの3人で90分で2点は入るかもしれない。

長友とトゥーリオは状況に応じで違った位置取りができると思う。常にジョッギングに終始する中村とアタッカーの岡崎は負けているときに登場すればいい。中村ケンゴは万が一勝っているときに出ると面白いかもしれない。あとの交代は時間稼ぎ。
とにかく運動会のような合言葉の走るサッカーはともかく、常にダッシュできる状態のサッカーをしてほしい。

今回のワールドカップは間違いなく3戦3敗だろうが、大切なのは点をどれだけ取れるか。オランダから3点でも取れば、世界を驚かせるという第一目標を達成できると思う。

2010年5月22日土曜日

モリーニョ

ポルトガルの誇るサッカー監督、ジュゼ・モリーニョが率いるインテルがチャンピオンズリーグの決勝で登場する。モリーニョのチームは、ポルトであれ、チェルシーであれ、どういう選手がプレーしていてもチームとしてあまり変わらない。
7、8年前のポルトのチームも、今のインテルも選手はロボットのように動く。守備のラインは、止まるときも走り出すときも、走る方向を変える時もいつも見事に同じ動作をする。攻撃の時は一直線にゴールに向かい、数名の選手があらゆる方向に走り出し、パスは相手を確認せずにすぐ出るが、ボールは不思議なくらい常に自軍の選手のもとに収まる。「旧共産圏国のサッカーのようだ」と表現されたくらい徹底的だ。
準決勝のバルセロナとの第2戦は攻撃対守備のチェスのような試合を見ているようで本当に面白かった。今回の試合も、ぜひ0-0のまま最後まで最高の駆け引きの試合になってほしい。
人生一度はサッカーチームの監督をやりたいと思っていたが、なんだかものすごく難しそうだ。