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2012年5月23日水曜日

耳とチューブ

右耳にまだ残っていたチューブが耳あかの固まりと化して外にでてきた。
この青色のチューブはもうだいぶん前から鼓膜から外れていて、その本来の役割はなしていなかった。小さいチューブの穴は完全に耳垂れのようなものでふさがっており、しかも乾いてガチガチになっている。こういう異物がずっと耳の中にひっかかっていたなんて、息子にとって気分のいいものではなかったはずだ。外には自然に勝手にでてきたが、よかった。

息子はおそらく常に中耳炎にかかっているような状態らしく、いつ、どの先生に見てもらっても「鼓膜はよくない」という返事が来る。

さて、チューブ留置の手術なんてする必要はあったのであろうか。結果的には術後も2度だったか3度だったか、抗生物質を飲む必要があるくらい熱を伴う中耳炎になった。左耳のチューブは3か月後に膿みと一緒になってあふれるように耳からでてきた。

ちょうど1年前になるが、チューブ留置の手術は2人の医者から進められ、結局セコンドオピニョンの医者により私立の病院で行われた。当時1歳半の息子は当然、親にとっても痛かった。チューブ留置の手術なんて簡単ですぐ終わるものだが、手術は手術である。結果論だが、効果がない手術なんてしなければよかった。

生まれてすぐジャテネというおそらく人生最大の手術を受けた息子だが、できることならもうずっと、手術や麻酔などと無縁でいてほしいものである。

2010年2月6日土曜日

空白の21日

生まれたばかりの息子がようやく病院生活を終え、家に帰ってきた。これから待ちに待った一家族の普通の生活が始まる。誕生から21日経っている。退院時に病名や手術の経過、治療の方法、手術後の容体などをまとめた書類を持たされた。あらためて、この病気の深刻さにびっくりさせられた。

息子の心臓疾患は一般的に完治せず、後遺症や合併症などの可能性がいつでもあり、見事に成功したジャテネ・スイッチ手術も「根治手術」と呼ばれていて、「完治」とは微妙にニュアンスが違っている。これから病院に頻繁に通い、医師団から定められた通りの薬を毎日服用し、同じ病気を持っている人たちからのアドバイスや生き方を参考にして息子を育てていかないといけなくなった。今まで、レールに乗った人生とか、ひとから指定された通りに行動するのが嫌いで逃げてきた自分にとっては何という皮肉だろうか。

大変お世話になったサンタクルス病院には、家から車で10分の距離で当たり前のように自宅から通っていたが、小児心臓外科の他の患者さんらはポルトガル全国各地から送られていることに気がついた。隣にいた女の子の赤ちゃんは300キロ離れたポルトから、違う部屋の男の子は1000キロ以上も離れたアソーレス島から、息子の退院の日にやってきた赤ちゃんはポルトガル最北のブラガンサからわざわざこちらまで来ていた。ヘリコプターで運ばれてきたのだろうか。そういう様子を見ていると、最高の病院で優秀な医師団から即急に手術を受けられたことは幸運だった。感謝しきれない。

いずれにしても、生活は一気に希望に満ちたものになった。様子を見ていると、とても数日前までは生命の危機にあった赤ん坊には見えない。胸にはしっかりと、縦に15センチほどの切開手術の痕があるが、それ以外はいたって普通の元気な赤ちゃんである。生まれてから退院までの日々の出来事は、それまでの生活から全く切り離された、別次元の世界に一気に放りこまれたようだった。しばらく心の片隅にしまっておきたい。

2010年1月21日木曜日

TGA

子供の病気の名は、完全大血管転位症(TGA、Transposition of Great Arteries)というもので、二万五千人に1人という割合で起こる先天性の奇形。手術は難易度の高いもので、肺動脈と大動脈を付け替えるという、想像を絶するもの。いろいろ先生方やとくに看護師さんから説明を受けていたが、インターネットに図解で一目瞭然のわかりやすい説明があった。心臓のことなんてどんな作りだったかよく思い出せないものだったから説明されても全くピンとこなかった。

手術はジャテネ手術を呼ばれているもので、歴史的には1980年代に一般的に行われるようになったものという。現在の成功率は90パーセント以上、再手術や合併症の可能性も10パーセント以下、数年過ぎるとさらに5パーセント以下という。緊急処置として、心臓の左右の壁に穴をあけ、血弁がふさがらなくする薬の点滴をしている。

親としては手術の成功を祈り、いまからでも子供の心のケアをするのみである。寝ていて急に暴れたりすると今から心配になる。話に聞くと、かなり精神的衝撃を受けた親もいるようで、当然ヨメのケアのことも考えないといけない。

これから試練が待っているだろうが、それを糧にして強くなっていくのみである。