2012年9月2日日曜日

ヴィゼウ、ダオ。

8月には何年ぶりかに休暇らしい休暇をとった。行き先は、リスボンから北東にクルマで3時間に位置する、ヴィゼウ市郊外のポヴォア・ダオという、ローマ帝国時代から存在するという、「人口30人以下」の小さな村だ。

というのは、この村は何世紀の間見捨てられた、無人の村だったのだが、最近になって中世の村を旅行者向けに再現したようだ。山に囲まれた村には10軒ほどの、石造りの美しい家が並んでいる。

そこには農業が行われていたり、家畜が飼われているわけではない。あくまで観光目的の村なので、プールやスポーツ設備があり、そして趣味のいい、かなり高級感にあふれるレストランが併設されている。

内部は建物そのものが中世のままなので、内壁の石畳は外壁と同じで、室内は薄暗いが巧みなデコレーションで、容易に素晴らしい雰囲気を醸し出すことに成功している。
やはり中世時代のキッチンを模倣した、グリル場がレストランの中央にあり、様子を眺めるばかりか、シェフのおばちゃんは気軽に会話にのってくれる。

ワインリストはいわゆる「地酒」を中心に豊富にある。早速silgueirosという、レストランから徒歩15分にある土地の白ワインを知ることになった。

注文の前からさっそくパン、オリーヴ、ヤギの生チーズにマメラードが出てくるのだが、これらはすっかりいつも食べ切ってしまうほど、非常に美味だ。聞けばこれらは一般に売られているものではなく、近くの無機栽培の農家で作られているものだという。
味にくせが全くない、正統派の、素朴な味である。

素朴な味はメニューにある、このダオ地方の料理にも当てはまる。素材を生かした、ストレートに美味しいものばかりである。大袈裟ではなく、一生こういう料理で生活してもいいくらいの、全くクセのない素晴らしいものだ。料理はこの地方特産の、真っ黒の土器に乗せられてくる。この土器をお土産に持って帰ったことは、言うまでもない。

こちらポルトガルで一人前を示す、「dose」というのはかなり曖昧な基準である。普通田舎では、1doseは十分2人で食べれる量だが、必ずしもそうではないことがある。この、ポヴォア・ダオのレストランの1doseは、妻と小さい息子に、かなりの量を食べる自分にも食べきれないくらいの量があった。

同じくらいかなりの量が出てくるのは、ポヴォア・ダオからクルマで20分の、ポルトガルの誇る美しい町、ヴィゼウの一番のレストランと評判の「コルティッソ」でもそうであった。2歳半の息子のためにいつも頼む野菜スープは、半リットルくらい出てきた。ここでも、評判に負けない印象的な料理を美味しくいただけた。

ヴィゼウには美しい街並みにふさわしい、美味しいものを食べられるレストランはいろいろあるのだろうが、この機会にミシェラン一つ星をもらったという、「ムラーリャ・セ」にも足を運んだ。そこでいただいた、子牛の煮込み料理は申し分のないものではあったが、こちらの「1dose」はまさに一人前であった。しかし、こういう旅行者向けの、どこかによそ行きの感があるレストランよりは、クルマで10キロ以下の徐行運転しかできない、古ローマ時代の道もたくさん残っているような村、ポヴォア・ダオでの食事の方が印象深かったことは確かである。

ちなみに値段の方は、これらのどのレストランでも「1dose」は昼10-15ユーロ、夜15ー20ユーロと、決して高いものではない。すなわち、またいつでも、何度でも足を運べられる。